薬剤部での研究について

1. 薬物および脂質のトランスポーターに関する研究

体内の細胞膜に存在するトランスポーターは、薬物や栄養素、生理活性物質、体外異物の細胞内への吸収あるいは細胞外への排出を行うタンパク質であり、さまざまな疾患や薬物の体内動態に関係していることが知られています。本研究では、培養細胞や遺伝子操作技術を用いて、トランスポーターによる薬物ならびに脂質の排出メカニズムに関する検討を行い、トランスポーターと薬物動態および疾患との関係を探ります。

2. リン脂質酵素蛍光定量法の開発

リン脂質とは、細胞膜や血中のリポタンパク(LDL、HDLなど)を構成する物質です。各種リン脂質は、様々な膜タンパク質(レセプター・チャネル・トランスポーター・酵素など)の働きを調節するため、リン脂質代謝異常は数多くの疾患の発症と関わっています。しかし、リン脂質と疾患との関係についての研究を行うにあたり、適切なリン脂質定量法が無いことを不便に感じていました。そこで、各種リン脂質に対する酵素蛍光定量法の網羅的開発に着手し、開発できたものから順番に特許出願を行っています。酵素蛍光定量法とは、複数の酵素反応と蛍光物質を組み合わせることで、特定の物質の定量を行う方法です。そして、今後、本定量法を用いたバイオマーカー探索を計画しており、動脈硬化・神経疾患・脂肪性肝炎・自己免疫疾患・がんなどの早期診断マーカー発見を目指しています。

3. 薬物動態、薬力学、薬理遺伝学的研究に関する研究

本研究では、経口分子標的抗がん薬の血中濃度を測定し、薬効・副作用との関連性を評価しています。また、これら薬剤に関連する薬物代謝酵素やトランスポータの遺伝子多型を解析し、薬効・副作用を予測するバイオマーカーの探索を行っています。さらに、スペシャルポピュレーションにおける至適投与量の検討や、薬物間相互作用の検証も行っています。

4. 吸入剤の適正使用に関する研究

錠剤、カプセル剤などの内服薬とは異なり、吸入剤は患者さん自身が適切に吸入器を操作し、吸入を行うことで効果を発揮します。吸入時の複雑な操作を患者さん自身が行う必要があるため、間違った使い方をすると、効果が弱くなったり、副作用が出たりします。当院薬剤部では、吸入剤の効果や副作用が変化する原因を解明する研究を行っています。 また、吸入剤の適切な使用方法を広めるため、滋賀吸入療法連携フォーラム(SKR)や吸入療法のステップアップをめざす会と共同し、吸入指導講習会などの企画・運営を行っています。

5. 臨床におけるエビデンス構築に関する研究

薬剤師が臨床現場で活動することの有用性を検討し、その成果を学術論文・学会発表を通じて公表しています。近年、薬剤師は外来や病棟に出向き、医師や看護師とともに患者さんの治療に関わる機会が増えており、薬剤師が関わることで患者さんのケアにどれだけの効果があったのかについて具体的なデータ提示とその評価を行うことが求められています。このような取り組みを通じて、薬剤師の職能を拡大し、患者さんにとってより良い医療の提供に繋げていきたいと考えております。